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2010/01/30 14:42
「裁判」の傍聴

 裁判の傍聴

 教科書という書物から学ぶことも大切だが、「世間という書物」から学ぶことはもっと大切である。そのことを実践するために、3年生を対象に大阪地方裁判所に傍聴に行く企画をしたところ、すでに関西大学法学部などに進学が決まっている生徒10名が参加したいと申し出てくれた。
 平成22年1月28日(木)、12時半に裁判所前に現地集合するよう生徒に指示する一方、私自身はどの法廷を傍聴するかを下見するために少し早めに出かけた。大阪地裁にはたくさんの法廷がある。生徒が興味を持ちそうな事件で、できれば新件で裁判の流れがわかるものを見せてやりたい。各階を見て回った後、605号法廷を傍聴することに決めた。廊下で開廷を待っている間に、ケータイの電源を切っておくことや、一切のカメラ撮影が禁止されていることなど、傍聴にあたって守るべき注意事項を伝えた。法廷は1時10分に始まり、午後5時まで3件の裁判が予定されていた。
 1件目の法廷はロシア人女性の覚醒剤取締法違反事件で、前回に続いて証拠調べが行われていた。尿検査の結果、フェニル・メチル・アミノプロパンが検出され、自宅のタンスからブツが出てきたにもかかわらず、本人は「私は覚醒剤はやっていない」と主張し、警察での取り調べに違法性がなかったかが詳しく検証されていた。女性検事が提出する証拠、それに反論する弁護人、あるいは裁判官の発言がロシア語の通訳を介してやり取りされる。専門用語が早口で飛び交うのを瞬時に通訳する。半端な語学力ではない。これだけでも生徒にとっては十分刺激的であったと思う。
 2件目は窃盗および暴行事件であった。どんな凶悪な事件かと思ったら、コンビニから105円のカロリーメイト1個を万引きして、犯人を捕まえようと追いかけてきた店員の足を蹴ったという事件であった。事件を起こしたのは住所不定で無職、若い頃から刑務所を十数回出たり入ったりしている60代後半の男性であった。空腹だったので万引きをしたが、高い品物だとお店に悪いと思って安いものを「軽い気持ちで」盗んだということだった。
 3件目は詐欺事件であった。土地の売買を巡って手付け金100万円をだまし取ったという事件である。被告人の親が証人として出廷し、今後の更正の手助けをすることを誓っていた。事実関係をすべて認めたので、今日の1回の公判で人定質問から、起訴状朗読、罪状認否、証拠調べ、証人喚問、論告求刑まですべてを見ることができた。ラッキーだった。検察の求刑は懲役2年であった。これに対して弁護側は、被告人が初犯であることや深く反省していることを考慮して執行猶予をつけてほしいと主張していた。次回、判決が申し渡される。
  裁判員制度が始まったせいか、ほかの学校の高校生も傍聴に来ていた。また、以前なら傍聴席はがらがらだったのに、今日は一般の人の傍聴も目立った。これも裁判員制度の影響かもしれない。「現実こそ最良の教科書である」というのが私の口癖であるが、裁判所は社会の問題点の縮図である。生徒は熱心にメモをとりながら聴いていた。参加したある生徒は「覚醒剤というとずいぶん怖いイメージがあったが、普通の人が覚醒剤に手を出し、裁判になっているので驚いた。ロシア語の通訳の人がすごいと思った」という感想を述べていた。日頃の授業では学べないことを学ぶことができたのではないかと思う。


2009/12/03 18:20
~新しい授業の創造~

 「生徒の心に届く授業」。それが私の理想である。10年たっても20年たっても印象に残る授業。そんな授業ができたらいいなあといつも願っている。ところが、最近、授業が生徒の心に届いていないのではないかと思う場面に出会うことがある。

 ある時思った。これは、ひょっとして講義形式というシステム自体の欠陥ではないか。そう思った瞬間、講義形式以外の授業が頭に浮かんだ。現在、3年生の進学コースの「現代社会」を担当しているが、今までの授業は教師が主役で、生徒は「観客」であった。これを逆転させてはどうか。つまり、生徒が主役で教師がわき役に回るのである。

 さっそく、新しいタイプの授業に挑戦することにした。まず、クラスの生徒を各4人の班に分ける。4人程度のグループが一番意見を出しやすいと思うからだ。全部で8つの班を作り、各班には名前をつけさせた。生徒の提案で野菜の名前で統一しようということになり、「なすび」「キャロット」「ワカメ」(これって野菜だったっけ?)などいろいろな名前の班ができた。「何でもいい」と答えた班があったので、そのまま「なんでもいい」(笑)という名前にした班もある。

 次にテーマ(データ)を与えて議論させた。いよいよここからが本当の授業だ。すぐに活発な議論を展開する班もあれば、そうでない班もある。議論しやすいように、考える際のポイントを示し、机間巡視をしながら質問に答える。このとき、生徒との1対1のコミュニケーションを大切にする。

 10分くらい議論させた後、各班の代表者に前に出てきてもらい、みんなの前で議論の内容を発表させた。あらかじめ、発表の基本フォームを次のように板書しておいた。

 「これから***チームで話し合ったことを発表します。このデータから読み取れることは、第一に・・・・・、第二に・・・・・、第三に・・・・・、以上、3点を指摘できると思います。」

 さすがに発表は緊張するとみえ、みんなコチコチだ。発表の途中でプレゼンテーションの基本的なやり方を指導する。すると早速、

 「しゃべるのが早すぎてわからへん」「生徒の目を見てしゃべって」

 などと発表者に向かって注文が出る。もちろん、発表者も負けてはいない。

 「そこ、私語をやめなさい」

 などとやり返す場面もあり、見ていて実に微笑ましい。日頃から生徒の仲が良いことをうかがわせる光景だ。つくづくいい学校だと思う。だれ一人寝るものもなく、すごく活気のある授業となった。こちらが期待していた以上にうまくいった。最後に、生徒の議論をふまえたうえで私がポイントをまとめ、1時間の授業を終えた。

 授業終了後に聞いてみた生徒の感想も、総じて好評だった。生徒の心に届いた授業だと久しぶりに充実感を味わった。次のテーマは労働問題、その次が社会保障である。地味なテーマをどう料理するか。講義形式という縛りから解放されると、どんどんいろんなアイディアが湧いてくる。生徒の皆さん、楽しみに待っていて下さいね。


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