児玉校長の教育エッセイ

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「鈍感すぎれば身を滅ぼす」講堂講話より

数年前に『鈍感力』という本がベストセラーになった。殺伐な現代社会にあって、世間の動きに気を囚われず、ある面『鈍感』で有るほうが生き易い、という事で、そんな本が売れたのかもしれない。しかし『鈍感力』も過ぎれば身を滅ぼすことになりかねない、ということを今日は話したい。
 
私は、15年程前に和歌山県紀ノ川市に山地を買い家を建てた。そこでは30羽ほどのニワトリを放し飼いにしている。敷地が広く畑やみかん山もあるので、最小はニワトリに餌をやらなかった。
ところが巣箱にキチンとタマゴを産んでくれず、山の奥や畑の草むらで産んでいる。
そこで市販の餌を毎朝与えることにし、巣箱に陶器製の擬似タマゴを置いたら、やっと巣箱で産むようになった。
ところが、あるときその粘土で作った擬似卵が、地面にころがっていた。
ニワトリが外へ持ち出せるはずないし、おかしいなア?と思っていたら、ある日、大きな青大将〔ヘビ〕がタマゴを喉まで飲み込んで巣箱から出てくるのを目撃。追いかけるとヘビは慌てて石垣の穴に逃げ込もうとする。しかし喉のタマゴが邪魔になって穴に入れない、青大将君は、後ろを振り向いて、口からポッ!とタマゴを吐き出してスルスルと穴の中に逃げ込んだ。ほんの一瞬の出来事であったが、吐き出すときにポッと音がしたのを確かに聞いた。
これで擬似タマゴが地面に落ちていた謎が解けた。ヘビが本物のタマゴと間違えて飲み込んだが、途中で陶器製のタマゴと気づいて吐き出したのである。青大将君は案外、賢いのである。
しかし中には、鈍感なヘビもいるのだ。数週間後、巣箱の擬似タマゴがまた見当たらない。周辺の地面を探したがどこにもない、おかしいなア、と思って日が過ぎた。数日後、家の裏にあったダンボール箱を何気なく覗いたら、2mもありそうな青大将が目をとろんとしてぐったりと丸まっている。よく見たらお腹が2箇所もブクッと膨れている。
あの擬似タマゴを、偽物と気づかずお腹まで飲み込んでしまったのだ。吐き出すことも出来ない、かと言って消化も排泄も出来ず、遂に動けずに体が弱ってうずくまっていたのだ。
私はヘビを見つけたら、捕まえて近くの川に持っていって放してやることにしている。タマゴを奪われないための自衛手段なのだ。
そのアホな青大将君も、いつものように橋の上から川に落としてやった。いつものヘビなら、水の上をスルスルと泳いで逃げるのだが、その青大将君は、飲み込んだ擬似タマゴの重さでブクブクと水の中に沈んでしまったのである。
この事で分るように、物事に鈍感すぎれば遂には身を滅ぼす、ということである。

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